いぬの看板

あの町角を曲がれば

いぬの看板<特別編・その11>

<特別編・その11>

(N暗K太・著/犬の看板 報告書 Voyage of my dog sigh 弥彦線越後線編>より)

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1.はじめに

今年のGWに実家のある福島県へ帰省した際に、県内の犬看板巡りの記録を「ある探訪記のための習作」というタイトルで記し、小冊子にして太田氏へ送りつけた。

小冊子は、太田氏だけに報告することを目的としたもので、大真面目な遊戯であった。タイトルに入れたある探訪記とは、太田氏がリトルマガジン『生活考察』Vol.06に寄稿した「犬の看板」探訪記〈茨城犬篇〉というエッセイを指し、エスキースなので軽めに読んでくださいという思いと本家に対しておこがましい気持ちで、習作と付け加えた。

小冊子を読んだ太田氏から、ブログにアップさせて良いか?という連絡を貰い、同氏が運営する「いぬの看板ブログ」に僕の探訪記がアップされた。この時、また読みたいというメッセージも貰っており、何かのタイミングで二回目を記さなければという意味不明な使命感と次は習作から前進しなければならないと気負いも生まれた。

来たる本番に備えたつもりはこの時は全くなかったが、二回目を書いている現在、そのタイトルを付けた意味があったのかも知れない。二回目の犬の看板探訪記は、どういったものにしようか。近隣の市区町村を巡り記すか、過去に太田氏に同行した記録を再考し記すか、そんな事をぼんやり考えていたが、旅情を催させるものが僕には必要だった。そしてこの夏、妻の実家がある新潟県佐渡市へ遊びに行く事になり大チャンスだと思った。

今回僕が記すのは、およそ半日の短い記録だ。犬看板回収という目的と共に旅の気分も詰め込みながら記していければと思う。何故こんな事を言うのかというと、二回目を書くにあたり僕は初めからブログ掲載を意識せざるを得なくなっていたからだ。もちろん、ブログ掲載は太田氏の判断によるので二回目の探訪記が陽の目を見る機会があるかどうかは分からない。

 

<特別編・その12>へ続く

 

いぬの看板<特別編・その10>

<特別編・その10/プロローグ>

突然にはじまるものは何も恋ばかりではない。

毎日なにげなくのぞく郵便受けにも「突然」がひそんでいる場合がある。

約半年前に<特別編・その9/エピローグ>を終えたときには、まさか<特別編・その10>を書く機会が訪れるとは予想もしていなかった。

 

某月某日、日の出前に家を出た。日銭のために労働にいそしみ、疲れ切った身体を引きずりながら深夜に最寄り駅をおりる。改札を抜け、寒さにふるえながら帰路を急いだ。

緩慢な動作でいつもの郵便受けを開けると、大きめの水色の封筒が入っていた。この手の郵便物が届くことはまれだ。たいていは何かの支払いを催促する無機質で機械的な封書か、新築マンションの完成を知らせる類の投げ込みチラシしかないからだ。

いぶかしみながら開封した。中身を取り出した瞬間に意味を悟った。これは、半年前に届いた「ある探訪記のための習作」(http://jet-shirei.hatenadiary.jp/entry/2019/06/01/104706)に続く創作物であると。

そこには「犬の看板 報告書」と題字が掲げられ、N暗K太(※個人情報保護のため一部伏字)の署名があった。そしてその下にはこう続く。

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以下のとおりご報告申し上げます。

【題字】 Voyage of my dog sigh <弥彦線越後線編>

【記】

  1. はじめに
  2. 旅の準備
  3. 出発の朝、いざ探訪、三条市
  4. 燕市
  5. 弥彦村
  6. 新潟市
  7. 探訪を終えて

以上

 

嗚呼、また誰かによってどこかの「犬の看板」が探され、見つかったのだなと、他人事のように納得した。

報告書を丁寧に一読し、感心した。今回もこれをブログで発表しようと決めた。

 

そのため、市区町村名を添えた「いぬの看板」画像をあげる行為をいったん中断して、何回かにわたってこのN暗K太氏の報告書を<特別編>としてアップしていくことにする。

 

<特別編・その11>へ続く

小説「犬たちの状態」連載開始

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犬にまつわる活動ということで久しぶりの番外編です。

小説『犬たちの状態 犬を通して世界を認識するための連作』の連載がフィルムアート社のウェブマガジン「かみのたね」ではじまりました。

http://www.kaminotane.com/series/7464/

写真家の金川晋吾さんとの共作です。月1回更新・全12話の予定です。 

この連作小説は「ODD ZINE vol.2」や「vol.3」に掲載されている金川さんの写真と僕(太田靖久)の短文のコラボ作品『犬たちの状態』を発展させたものともいえますが、それぞれ異なる方向性で創作しています。

「ODD ZINE vol.3」は間もなく発売です。そちらの『犬たちの状態』もよろしくお願いします。