いぬの看板

あの町角を曲がれば

<告知>2021/4/24「犬たちの状態」(フィルムアート社)刊行

犬がらみの告知です。

フィルムアート社のウェヴマガジン「かみのたね」で連載していた「犬たちの状態」が書籍化されます。2021年4月24日刊行予定です。

僕の小説と金川晋吾さんが撮った犬の写真で構成されています。

 

filmart.co.jp

 

こちらから冒頭の第一話のみ引き続き公開中です。

 

www.kaminotane.com

 

猫派の方々もよろしくどうぞ。

 

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いぬの看板<特別編・その29/エピローグ>

いぬの看板<特別編・その29/エピローグ>

 

数回にわけてアップしてきたN暗K太氏の『犬のかんヴぁん』 Voyage of my dog sign  ~埼玉県東部地域編~がこれですべて終了した。

三度目の彼からの報告だったのだが、それぞれパターンが異なるうえ、初めて見る「犬の看板」もあって、私にとっても非常に新鮮で驚きに満ちた体験だった。

 

街中をふらついて「犬の看板」を探していると、自分が一体何をしているのか意味がわからなくなる瞬間にたびたび襲われる。数時間歩き回っても見つからない時はなおさらだ。

(ちなみに、行田市熊谷市はどちらも三時間ほど歩いたが、一枚も見つけることができなかった経験がある)

そんな風に自分の行動に懐疑的になりつつも、どうにか歩みを進めていけば、新しい「犬の看板」と出会えるかもしれないし、実際に「犬の看板」に出会えると、そのモヤモヤは一気に払拭され、カタルシスが訪れる。

 

ああ、ここまで来て本当によかった。

 

その感慨は人生を肯定する感覚と酷似している。それは自分自身に無理矢理言い聞かせて手に入れたものではない。「犬の看板」という外部の事物によってもたらされる、力みのない明るさをともなう知覚だ。

資本主義を軸にした世界では楽しみを得るためには相手に金銭を渡すのが筋だろう。おいしい食事や娯楽を享受したいと望む時、私はいつも財布の中のお金のことを気にかけている。

でも「犬の看板」を探している時、私は財布のことをすっかり忘れている。日常の先にある非日常の中でたしかに自由になっているのだ。

生まれてからこのかた、何一つ良いことはなかった。泥水だけをすすって生活を重ねた私の人生の中で、これほどはっきりと輝く希望は他にない。

 

ああ、日本のどこかに私を待っている犬がいる。

 

その想いだけで今日も私は生きていける。

というわけで、今回の特別編もこれにて終了。

次回からはまた市区町村名だけを添えた犬の看板画像をアップしていきます。

 

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いぬの看板<特別編・その28>

いぬの看板<特別編・その28>

(N暗K太・著『犬のかんヴぁん』 Voyage of my dog sign  ~埼玉県東部地域編~より)

 

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■エピローグ

「今日は観光ですか?」

朝の受付時に、利用票の目的欄に記入をし忘れていたようだ。

「観光というか、まぁ…」

白岡市観光協会へ戻り、自転車の返却をしているところだ。

「市内ですか?」

白岡市とその周りを…」

「寺院とか?」

「犬…犬の看板を写真に…犬のフンを持ち帰りましょうって看板を集めていまして…」

係の男性は感心したように頷いた。「そういうお仕事で?」

仕事ですと言いかけて「趣味です」と正直に答えた。

「マンホールとか集めている人居ますよね」

その察しのよさに気を許し、今日一日の記録にまとめること、その記録を友人に送る遊びをしていること、全てを正直に伝えた。係の男性は、また感心したように何度も頷きながら、代わりにペンを持って目的欄に記載してくれた。

今回の探訪では、多くの公園を巡ったことが、自身のライフスタイルにとって収穫だ。ここは水遊びが禁止されておらず水が流れているな、ここは船型遊具があり楽しそうだな、BBQ場と遊び場が近くていいな、次は子供たちを連れてそれぞれの公園を訪れたいと思った。

犬看板は、予定した市町村全て+αで写真に収めることができた。ポケット旅行記の移動履歴を眺める。一本隣の道を走っていたら、別な犬看板たちに出会えたのだろうか。移動距離は、約70.1キロ。

さぁ、明日は仕事だ。日常に戻ろう。

 

■ポケット旅行記

公開URL https://travelboard.sakura.ne.jp/map.php?id=22596

 

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■オリジナル犬看板

今回訪れた市町村の中から、オリジナル犬看板を描いてみようと考えていた。どこが良いか思案して、伊奈町と決めた。最後は、イラストでお別れしたい。

 

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いぬの看板<特別編・その29/エピローグ>に続く

 

 

いぬの看板<特別編・その27>

いぬの看板<特別編・その27>

(N暗K太・著『犬のかんヴぁん』 Voyage of my dog sign  ~埼玉県東部地域編~より)

 

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五霞町

幸手市を北上中に、予定にはなかった五霞町まで足をのばせるのではないか、そこからさらに栗橋町までまわって来れるのではないかと考えた。幸手市を縦に走破し、幸手市最北の県営権現堂公園幸手権現堂桜堤(4号公園)まで来た。

五霞町は、川を越えた先だ。橋の上に茨城県の標識。そして県を越えた瞬間、遠くまで来たと、しみじみとした気持ちになり、同時に疲労がドッとおそってきた。

五霞犬】は、前回の探訪、弥彦線越後線編で、弥彦村にて見つけた犬看板と同じイラストだった。午前中に白岡市でも弥彦村と同じ犬看板を見つけたが、遠く離れた市区町村で、共通の犬看板を使用しているのは興味深い。

 

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久喜市

Googleマップ上では栗橋町と表示があるものの、久喜市突入を告げる標識を目の前に違和感を感じる。その場で栗橋町について調べると、2010年3月に久喜市と合併しているではないか。冷静になって思い返すと、探訪プランを練った夜、幸手市の隣は久喜市のみだったはず。

久喜市は面積も他の市町村に比べ大きく、久喜市よりさらに北に位置する加須市までは、今回の旅では届かないと判断していた。ここに来るまでマップを確認する度に、栗橋町の文字が頭に刷り込まれ、今はなき幻の町を目的地にセットしていたようだ。

疲れもピークを超え、地図を正確に見る余力も残っていなかったということか。まだ行けるまだ行けると欲をかき、時間の許す限り、犬看板目指して猪突猛進していた。気づけば県営権現堂公園多目的運動広場(1号公園)まで来ていた。

 

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【権現堂犬】を見て、犬看板の替え時は、いつなんだろうと思う。巷には文字が剥げたり褪せたりして読めないもの、すべての色が抜け落ちてまっさらな看板もある。本来持つ看板としての意味を成してはいない。でもそこに犬が居れば、僕らは見つけてあげられる。

さて、白岡市に戻ろう。自転車の返却は十七時まで。残り二時間を切っていた。白岡市観光協会までの所要時間を調べると、車で40分表示。

園内のトイレで顔を洗い、ペットボトルのお茶を口いっぱいに含み、一気に飲み込んだ。ずっと漕ぎっぱなしだったので、お尻の痛みが増している。南下しながら、久喜犬を探そう。自転車を漕ぎ出す。帰り道だと思うと、急にペダルが軽く感じた。

日光街道幸手宿を通る。風景を楽しむこともできる心境だ。青毛堀川沿いで【久喜犬】と遭遇、魂を抜き取られ、傀儡感のある、不気味犬だ。これでコンプリート。

 

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いぬの看板<特別編・その28>に続く

いぬの看板<特別編・その26>

いぬの看板<特別編・その26>

(N暗K太・著『犬のかんヴぁん』 Voyage of my dog sign  ~埼玉県東部地域編~より)

 

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杉戸町

充電が残り5%を切った。旅の旅程を記録するポケット旅行記のアプリを起動している影響で減りも早い。モバイルバッテリーは故障中で持参していない。空腹感も限界を超えそうだ。

Googleマップを開き、次の目的地、幸手市方面でファーストフード店を検索。マクドナルドがヒットした。大落古利根川と並走する。犬看板の気配がないので一本中へ。

住宅街に入り【杉戸犬】と邂逅。ザ・オリジナル感に興奮。勇ましい。【幸手保健所管内狂犬病予防連絡協議会(2匹目)】の犬看板も発見。

 

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電池が無くなる前にお店へ向かう。空腹で注意力が散漫になっている。幸手市の犬看板は後から探そう。風景にほとんど目もくれずマクドナルド4号線幸手店へ向かった。

幸手市

最近、子供たちがハッピーセットを欲しがるのでマクドナルドを利用する機会が多い。コンセントのある席で、スマートフォンの充電も当たり前の感覚としてあり、申し訳なさもない。

ここまで順調過ぎるペースで来ている。休憩は一時間とっても問題ないだろう。しかし、なかなかバッテリーがたまらない。ポケット旅行記のアプリを終了し、スマートフォンの電源も落とした。結局一時間三十分程滞在し、バッテリーも90%表示を確認。体力も回復した。

幸手市は、今回の探訪で一番探したかもしれない。住宅がある道を小刻みに曲がり、確認する。気配はするのになかなかお目にかかれない。宮代町と杉戸町幸手保健所の犬看板を見つけてはいたが、やはり幸手市のオリジナル犬を見てみたい。民家のコンクリート壁に、今にも消え入りそうな【幸手犬】を発見(冊子に印刷すると完全に消えている)。

このシルエットは、宮代町で見かけた犬と同じだろう。その後も、道をくねくねと進み探索するも、これ以上は見つからなかった。

 

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いぬの看板<特別編・その27>に続く

 

 

 

いぬの看板<特別編・その25>

いぬの看板<特別編・その25>

(N暗K太・著『犬のかんヴぁん』 Voyage of my dog sign  ~埼玉県東部地域編~より)

 

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春日部市

犬看板に限っていう、ハズレの公園がある。ハズレの公園とは、犬の入場が禁止されている公園だ。

犬を入場させないことが前提であるため、犬のフンを持ち帰ろうなどの文句があるはずがない。それでも公園の周りにはあるかもしれないと信じて探すも、あるのは犬の散歩禁止と書かれた簡素な看板だけだ。ここに犬のイラスト一つでもあれば気分も違ったが、禁止の文字だけが強く心に残る。いたたまれない気持ちになり、そそくさと内牧公園を後にした。

最寄りの内牧小学校をぐるりと一周する。校庭では、縄跳びの練習をしている低学年と思われる子たち。若い男の先生が「長く続けるコツは、同じ場所で、同じテンポで飛ぶこと」と生徒たちに話していた。自転車を漕ぐことも同じだと思った。この若い先生の言葉を、足の疲れなどでペースが乱れた時に、何度も頭の中で思い出しては同じテンポで走ろうと心掛けた。

次は住宅街へ向かおう。信号待ちをしていると、道路を挟んだ住宅の塀にそれらしき看板。はやる気持ちを抑え、ペットボトルのお茶を一口飲んだ。隣の車道には同じく信号待ちをしている白のセルシオ。車内には煙草をポッポッポッと連続で吸い、オイシそうにくゆらせているヤンキーメン。

信号が青になる。男性が、先にどうぞ、と手を差し出してきた。イカつい風貌とのギャップにやられる。軽くお辞儀をかえす。看板に近づくと、ビンゴ!【春日部犬】だ、少年と丸太の上でスリリングな遊びに勤しんでいる。丸太のリアル感もグッド。

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■宮代町

春日部市の犬看板をゲットした場所から、川を越えればすぐに宮代町だ。

公園・はらっぱーく宮代町へ来た。芝生が青い広々とした公園だ。シルバーの男女がゲートボールの試合をしている。自転車をとめ、眺める。「まっすぐ!まっすぐ!」「よっしゃぁー」「んっぐっあ〜」動きの少なさに反してだいぶ白熱しているようだ。スティックがボールを叩く音に心地よさを感じる。

ここでは、【埼玉県狂犬病予防協会】と【幸手保健所管内狂犬病予防連絡協議会】の犬看板を発見した。

 

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杉戸町方面を目指しながら宮代町の犬看板を探す。宮代町郷土資料館の案内標識に反応した。

向かってみる。正面玄関前まで来たが、反射的に通り過ぎる。隣の百間小学校をぐるっとまわったのち、郷土資料館の裏手にある駐車場まで来た。閑散としていて、落ち着けそうだと思い、小休憩を取ることにした。

ここまでの旅程で、足に疲れが蓄積し、自転車を漕ぐスピードも落ちてきている自覚がある。足の感覚が「自転車を漕ぐ足」になっているので、一度降りて、リセットもしたい。

駐車場の奥は、公園のようだ。さらに奥に雑木林が見える。木々の中で気持ちも身体もリラックスしようと、林の入口に入った途端、白く小さな虫が塊りで襲ってきた。全速力で逃げた。余計な体力を消費してしまった。

一気に空腹感も襲ってきた。スマートフォンの充電が残り10%を切っていた。どこか電源のあるファミリーレストランやファーストフード店で、休憩がてら充電とは考えていた。頭がご飯で支配されそうになりながら先へ進む。

賃貸アパート前にて、柵に看板をうまく通してはめ込み、設置しているワンチャンを発見。宮代町と書いてあってくれと願い、上方へズラして、ガッツポーズ。【宮代犬】を写真に収め、元の位置に戻して、そそくさと立ち去った。

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いぬの看板<特別編・その26>に続く