いぬの看板

あの町角を曲がれば

いぬの看板<特別編・その25>

いぬの看板<特別編・その25>

(N暗K太・著『犬のかんヴぁん』 Voyage of my dog sign  ~埼玉県東部地域編~より)

 

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春日部市

犬看板に限っていう、ハズレの公園がある。ハズレの公園とは、犬の入場が禁止されている公園だ。

犬を入場させないことが前提であるため、犬のフンを持ち帰ろうなどの文句があるはずがない。それでも公園の周りにはあるかもしれないと信じて探すも、あるのは犬の散歩禁止と書かれた簡素な看板だけだ。ここに犬のイラスト一つでもあれば気分も違ったが、禁止の文字だけが強く心に残る。いたたまれない気持ちになり、そそくさと内牧公園を後にした。

最寄りの内牧小学校をぐるりと一周する。校庭では、縄跳びの練習をしている低学年と思われる子たち。若い男の先生が「長く続けるコツは、同じ場所で、同じテンポで飛ぶこと」と生徒たちに話していた。自転車を漕ぐことも同じだと思った。この若い先生の言葉を、足の疲れなどでペースが乱れた時に、何度も頭の中で思い出しては同じテンポで走ろうと心掛けた。

次は住宅街へ向かおう。信号待ちをしていると、道路を挟んだ住宅の塀にそれらしき看板。はやる気持ちを抑え、ペットボトルのお茶を一口飲んだ。隣の車道には同じく信号待ちをしている白のセルシオ。車内には煙草をポッポッポッと連続で吸い、オイシそうにくゆらせているヤンキーメン。

信号が青になる。男性が、先にどうぞ、と手を差し出してきた。イカつい風貌とのギャップにやられる。軽くお辞儀をかえす。看板に近づくと、ビンゴ!【春日部犬】だ、少年と丸太の上でスリリングな遊びに勤しんでいる。丸太のリアル感もグッド。

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■宮代町

春日部市の犬看板をゲットした場所から、川を越えればすぐに宮代町だ。

公園・はらっぱーく宮代町へ来た。芝生が青い広々とした公園だ。シルバーの男女がゲートボールの試合をしている。自転車をとめ、眺める。「まっすぐ!まっすぐ!」「よっしゃぁー」「んっぐっあ〜」動きの少なさに反してだいぶ白熱しているようだ。スティックがボールを叩く音に心地よさを感じる。

ここでは、【埼玉県狂犬病予防協会】と【幸手保健所管内狂犬病予防連絡協議会】の犬看板を発見した。

 

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杉戸町方面を目指しながら宮代町の犬看板を探す。宮代町郷土資料館の案内標識に反応した。

向かってみる。正面玄関前まで来たが、反射的に通り過ぎる。隣の百間小学校をぐるっとまわったのち、郷土資料館の裏手にある駐車場まで来た。閑散としていて、落ち着けそうだと思い、小休憩を取ることにした。

ここまでの旅程で、足に疲れが蓄積し、自転車を漕ぐスピードも落ちてきている自覚がある。足の感覚が「自転車を漕ぐ足」になっているので、一度降りて、リセットもしたい。

駐車場の奥は、公園のようだ。さらに奥に雑木林が見える。木々の中で気持ちも身体もリラックスしようと、林の入口に入った途端、白く小さな虫が塊りで襲ってきた。全速力で逃げた。余計な体力を消費してしまった。

一気に空腹感も襲ってきた。スマートフォンの充電が残り10%を切っていた。どこか電源のあるファミリーレストランやファーストフード店で、休憩がてら充電とは考えていた。頭がご飯で支配されそうになりながら先へ進む。

賃貸アパート前にて、柵に看板をうまく通してはめ込み、設置しているワンチャンを発見。宮代町と書いてあってくれと願い、上方へズラして、ガッツポーズ。【宮代犬】を写真に収め、元の位置に戻して、そそくさと立ち去った。

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いぬの看板<特別編・その26>に続く