いぬの看板

あの町角を曲がれば

いぬの看板<特別編・その15>

<特別編・その15>

(N暗K太・著/犬の看板 報告書 Voyage of my dog sigh <弥彦線越後線編>より)

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5.弥彦村

川の向こうが弥彦村だ。朱色の橋を渡る。

橋の入口には、鳥居のロゴの下に弥彦村と書かれたカントリーサインがある。看板は色褪せ全体にヒビが入り、水分を全て抜き取られたような干からび感がある。日差しのせいか看板が反射し歩行者目線では絵や文字を判別するのはほぼ不可能だ。

手を高く伸ばしながら角度を変え写真に収めて眺めることでようやく確認出来るが、それでも目を凝らさなければならない。まるで凝視すると文字が浮かび上がるステレオグラムのようだ。

橋を渡ると直進か左か右か、選択を迫られる。遠目で看板らしきものが確認できる右へ歩を進める。看板はポイ捨て禁止を警告するものだった。さらに視線を奥に向けると建物もなく緑道を進むようなので引き返し逆方向に直進する。整備された水路を見下ろす形で歩道が続き両脇には民家が多くある。目線の奥に衝立が見えたのでダッシュ

弥彦村の犬看板だ。一歩毎にポイズンを食らっている。魅惑的だ。バシュバシュ、しばし16ビットの世界に空間移動していた。すぐさま吉田駅へ引き返す。

引き返す途中で見逃していた新潟県狂犬病予防推進協議会の犬看板を発見した。縦に入った柵が絶妙に作用し犬が二匹居るようにも見え、これも騙し絵の類いではないのかと錯覚した。

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弥彦村

 

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新潟県狂犬病予防推進協議会

 

新潟行きの電車には無事乗車した。あとは新潟で友人と合流して佐渡へ行くだけだ。旅の終わりを意識する。

新潟駅では、Negiccoのグッズショップ「EAST MOAT STREET BLUESイーストモートストリートブルース)」に寄ろうと考えていたが、バスへの乗り継ぎが上手く行きそうにない。お土産を買う時間も作らねばならないので無理は出来ないと思い、次回の楽しみに取っておくことにする。

駅前を散策しながらゆるりと万代シティバスセンターへ向かおう。目を閉じながらそう思案しているといつの間にか寝てしまっていた。車内の騒がしさで目を開けると、周囲は学生さん達で固められていた。

新潟大学前駅へ停車したようだ。車内は冷房が効いている。新潟駅に着く頃には汗は完全に引いて服も乾いていた。

 

<特別編・その16>へ続く