いぬの看板

あの町角を曲がれば

いぬの看板<特別編・その13>

<特別編・その13>

(N暗K太・著/犬の看板 報告書 Voyage of my dog sigh <弥彦線越後線編>より)

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3.出発の朝、いざ探訪、三条市

時刻 午前530分頃

 飼い猫に十分なご飯と飲み水を置き、姉に猫の面倒を宜しくお願いしますとLINEした。魔法瓶に麦茶を満タンに注ぎ家を出る。既に日の出は迎え早朝とは思えない明るさだ。駅へ向かう自転車の上で少し風の冷たさを感じるが肌寒くはない。信号機の青色が眩しい。旅立ちの朝はいつだって世界がクッキリと映る。遠くでラジオ体操第一の曲が聞こえる。123456、深呼吸…。

 新潟行きの新幹線内は混雑していた。席車両から溢れた人達がデッキに流れている。僕もデッキの人混みに埋もれた。結局、燕三条駅に着くまで席に座ることは出来なかった。

 燕三条駅は、金属加工の町だ。新幹線の改札内には、特大のナイフとフォークが×印の形で飾ってある。改札を出ると、今度は大きなショーケースがあり、その中には地元企業の金物製品が並んでいた。同じ金物でも微妙に形状や色合い、輝きが違う。企業数の多さに驚かされた。

吉田駅行きの弥彦線の電車は約1時間後。まずは腹ごしらえだ。朝食だ。

犬看板だけをアクティブに巡りながら食すご飯を犬看板めしと名付ける。この旅、いや犬看板めし史上初(たぶん)は、駅構内の駅そばだ。もり蕎麦(並)の冷やしを注文した。底浅の透明なガラス皿、そば量以上に盛られたネギと海苔。もっさりした麺は口の中に入れるとご飯を食べているかのようだ。海苔がいつまでも口の中に残る。お皿にも張り付く。一人で店を切り盛りしているおばさんは黙々とキッチン周りを掃除している。ウォーターサーバーからちょろちょろ出てくる水はとても冷えていた。口の中の海苔を洗うようにコップの水を一気に飲み干した。記念すべき犬看板めしを撮り損ねてしまったことをお詫びしたい。

 朝食を済ませた後は三条市の犬看板を探す。新幹線内で下調べしていた駅より徒歩10分程の公園へ向かう。もしこの公園で回収出来なかったら、公園の先を流れる信濃川の河川敷を狙う予定だ。国道沿いを歩く。とても長く遠く感じる。iPhoneの時計を見るとそれほど時間は経っていない。僕の経験上、国道沿いに犬看板があることは多々あるが、見晴らしが良いため遠くまで確認できてしまい、看板らしきものが見えないと進む気にならない。今回は公園へ向かう為に進むしかない。信号待ちも長く感じる。信号機の3つ団子が縦向きだ。信号が青になる。全く眩しくない。

歩道を歩く僕の横を大きなダンプトラックが通り過ぎた。キャップを深く被り直し少し気合いを入れた。国道から中に一本入る。フィールド上の中田ヒデのように首をキョロキョロさせ、スペースではなく犬看板を見つける。とにかく四角いものだ。移動中に犬看板を見つけることはできなかったが、目標だった公園内にて無事三条市の犬看板を発見した。

スクール調だ。オトナ犬の笑顔は穏やかで温かみのある一枚絵だ。園内の一角が小高い丘になっている。丘を勢い良く駆け上った。気持ちは次の目的地へと向かっていた。

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三条市

 

<特別編・その14>へ続く