いぬの看板

あの町角を曲がれば

いぬの看板<特別編・その8>

<特別編・その8>

(N暗K太・著/『ある探訪記のための習作』より)

 

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あとがき

 

実家には一週間ほど滞在した。

滞在中は、犬の看板探訪の他に父が育てている菊の苗をハウスから畑へ移動する植え替え作業を手伝った。その間、子供たちは土いじりや水遊びを楽しんだ。畑仕事の道具や機械、特にトラクターは座席の取り合いになるほど夢中になっていた。

県が紹介する福島市内の子供の遊び場もいくつか訪れた。新幹線に乗り、大好きな車での移動(僕は車を持っていない)、おじいちゃんと走って競争したり、おばあちゃんに絵本を読んでもらったり、普段とは違った世界で楽しそうな子供たちの表情を見て、ゴールデンウィーク前日に帰省を即断した事が良き判断だったことを思った。

いきなりで申し訳なかったが妻には育児から離れ一人になる時間を持たせることができた。犬看板については、少ない時間で効率良く回収する事が出来た。

福島県内は面積が広く市町村間を移動するのも大変だ。限られた時間の中では実家を拠点にして収集をする範囲は限界だと思った。県内の市町村すべての犬看板を回収するには、そのためだけの時間を確保して探訪すべきだと思った。

本宮市浪江町の犬看板に遭遇した時は驚いた。汚れもなくとても新しい看板に見えたが、よく見ると下側に陥没した箇所が何点か確認できた。留め金か何かで看板を挟んでいたのかではないかと推察すると、看板の立て方を変えたか、或いは何処かに括りつけられていた看板を移動して持ってきたか。

2019年5月末現在も浪江町の一部は帰宅困難区域に指定されている。

今回の帰省は、僕が当初イメージしたいくつかの思惑を十二分に達成できた時間になった。そして結局ビールを控える事が出来なかった事をここに記す。

 

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(N暗K太・イラスト)

 

<特別編・その9>へ続く