いぬの看板

あの町角を曲がれば

いぬの看板<特別編・その16>

<特別編・その16>

(N暗K太・著/犬の看板 報告書 Voyage of my dog sigh <弥彦線越後線編>より)

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6.新潟市

新潟駅万代口を出ると、タクシー乗り場があり、キャリーバックを抱えた人達がタクシーを待っていた。

その先にバスターミナルが見える。路線は10以上あるだろう。バスが横並びで発車する形になっている。戻ってくるバスは、皆バックで発車位置へ停車している。円形ではなく横並びの形は珍しいと思った。

バスターミナルを過ぎ、近場の公園へ来たが犬看板が見つからない。公園の先に住宅街が見えるので進む。電信柱の住所プレートを見ると、南万代町と書いてある。遠くの方に煙突が見え黒煙が昇っている。犬看板がある気配がしない。

持参した魔法瓶が空になった。道中見つけた個人商店は閉まっていた。ここまで順調に犬看板を回収出来ていたことと、これまでの犬看板回収時間と比較しても時間はあったことで気が緩み、公園があり万代シティへ遠回りしないルートを選択してしまったが、もう少しルートを吟味すればよかったなと反省した。

駅前の公園は要注意だったはずだ。特に大きな市の駅前公園では犬看板はあまり見掛けない。これは一つの推測だが、恐らく人の出入りが激しいため、犬の散歩をするには不向きで看板の必要性がないのではないか。また、看板が乱立しないよう景観も気にしているだろう。

犬看板を回収できないまま万代シティについた。途中、NGT48劇場を横目に通り過ぎた。バスの発車時刻まで20分は残されていたがこの周辺に犬看板があるとは思えない。お土産用にゴディバでクッキーを購入し、デパ地下でコーヒーを買い、イートインスペースでiPhoneの充電をした。予定していた新潟港行きのバスは超満員により乗車することが出来ず、タクシー乗り場にも暫くタクシーが来ず焦ったが、僕の他にも待ち人が溢れているためか、急遽臨時のバスが出るとアナウンスがあり、そのバスに乗車することができた。

新潟港の佐渡汽船内は、佐渡行きのフェリーを待つ人でごった返していた。友人も予定していたバスに乗ることが出来ずに一本遅らせてフェリー出港時刻ギリギリで乗船した。

フェリーが動き出す。銅鑼の大きな音が鳴り響く。友人と二人で船の甲板に出た。日差しが甲板に反射し目を開けていられない。風が強く、時折その風の強さで身体がよろける。ほんのり潮の香りがする。もうすぐ佐渡か。

犬の看板のことは忘れていた。妻や子供達の顔が頭に浮かぶ。フェリーを囲うようにウミネコが飛翔している。

 

.探訪を終えて

11月某日、写真新世紀の公開審査会に出向いた。優秀賞受賞者7名が公開プレゼンテーションを行いグランプリを選出するものだ。

優秀賞の一人に、全国に点在する気象観測点の装置の写真をまとめた方がいた。彼はプレゼンで装置の写真が映される度にこれは何処どこの場所で撮影したもので、ここに辿り着くまで大変だったとか、この装置実は学校内にあったんですとか、とてもハッキリと話されていた。

素晴らしいと思った。自分が歩いた場所の風景や匂いなどを覚えているのが話ぶりでわかったからだ。元メジャーリーガー松井ヒデも現役時代に自身が放ったホームランの対戦ピッチャーや球種を覚えている云々というテレビ番組を見たことがある。

話を犬看板に戻す。犬の看板集めという目的のため一心不乱に町角を曲がる。背中に浴びた太陽の熱さや、国道を歩いた時の車の排気ガスの匂い、腰まである雑草をかき分けて犬看板を撮影したこと、犬看板の裏にトカゲが張り付いていたこと、通り過ぎた家の縁側に座っていたおばあさんの靴がReebokイカすなと思ったこと、長くコンクリートを歩いた後で砂利を踏むと足が軽くなったように感じたこと、改めて犬看板を眺めながらそういった感覚や出来事を僕も鮮明に思い出すことができる。

 

佐渡両津港に着いた僕と友人は、発車するバスを待つまでの間、コーヒーハウス再会という喫茶店で過ごした。会計が一緒になった地元の人にこの辺で美味しいご飯屋さんがないか尋ねると、ないと即答された。無言で店を出る。お店から離れたなと感じたところで、友人とお互い目を丸くしたまま向き合い、吹き出し笑い合った。

 

一週間ぶりに見た子供たちは、真っ黒に日焼けし逞しく感じた。妻も妻の両親も元気そうだった。

滞在中に友人とは、海で泳ぎ、夜は花火を見に行き、郷土資料館でのろま人形を見たり、うさぎ観音を見たり、観光名所を巡った。いくつか立ち寄ったご飯屋さんはどれも美味しかった。佐渡は魚介のイメージだが、キュウリ、ナス、トマトなどの夏野菜は一口で採れたて感が分かり最高に美味しかった。

友人が帰京した後は、家族とゆっくり過ごした。そんなナチュラルな状態で過ごしながらたまたま見掛けた犬看板たちを紹介して終わりにしたい。

 

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佐渡市

 

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小木町

 

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相川町

 

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おまけ(弥彦村 カントリーサイン

 

<特別編・その17>へ続く