いぬの看板

あの町角を曲がれば

いぬの看板<特別編・その2>

<特別編・その2>

(N暗K太・著/『ある探訪記のための習作』より)

 

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まえがき

 

今年(2019年)のゴールデンウィークは、天皇の退位と即位により10日間の超大型連休になった。

長男の幼稚園入園で出費がかさんでいたためGWは生活の足しになればと日雇いの仕事をする予定だった。友人からタイル張りの仕事を貰っていたがGW直前に工事スケジュールが変更、人手が充足したと断りの連絡を受けた。

不意に中島みゆきの「ホームにて」を思い出した。「ふるさとへ向かう最終列車に乗れる人は急ぎなさい」この歌は結局電車に乗らなかった人の歌だが、僕はこんな時は実家に帰るべきだと清々しく思った。

子供たちに普段と違う刺激を与えたい、父母に孫の顔を見せられる、長男が入園してから明らかに子育てのギアを一つ上げ頑張っていた妻の休養、そして僕自身は実家周辺の犬の看板を写真に収める楽しみがある。

いくつかの思惑が瞬時に頭に浮かびGWを実家の福島で過ごすイメージが色づいた。今回の帰省は思惑の一つである妻の休養の為に僕一人で長男と次男を連れて帰った。

 

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犬の看板と福島

 

犬の看板とは、犬のフンの後始末を注意する看板のことだ。(以降、犬看板と呼ぶ)

僕が福島県の犬看板を収集する理由は、先輩で友人でもある太田氏から福島県内の市町村の犬看板とフレコンバックを交互に組み合わせた写真の構想を聞いたからだ。

同氏とは震災以後から福島県内を巡る旅を続けている。2016812日に南相馬市復興支援ツアーで市内のある神社を訪れた際に同氏が犬のイラストに南相馬市と書かれた看板に反応した。「汚染土は持ち出せないのに、犬のフンは持ち帰る皮肉」と同氏はその場で口にした。

後日、日帰り温泉施設の早朝風呂でその構想を聞いた時、アイデアの面白さと分かりやすさから瞬時に僕は唸った。アイデアの終着地は未だ不明だが何か面白い事が待っているかも知れないと感じ協力する気持ちでいる。

福島以外でも旅先で犬看板を見つけると太田氏へ写真を送っている。そもそも犬看板のイラストには目を奪われる引力がある。僕自身は猫派だが犬のイラストを見るのは好きだ。どの犬のイラストもついつい語ってしまう愛おしさがあるし、大袈裟に言って一枚もハズレがない。

太田氏が開設した犬看板だけを定期的にアップしているブログ(※1)があるので様々な犬たちの表情や佇まいを覗いて欲しい。 

1 いぬの看板ブログ http://jet-shirei.hatenadiary.jp

 

子供への刺激、父母と孫の触れ合い。この二点の思惑を叶え犬看板を回収できる妙案は、県内の子供の遊び場を軸に周辺の犬看板を回収することだと考えた。

移動時間に配慮する。4歳と2歳の子供と父母の負担を考え、車で1時間以内の場所をネット検索、なるべく出費がかからない公園や公共施設を探す。

探し出すと多くの施設がヒットした。福島県のホームページには無料で遊べる県内の屋内施設一覧なるページがありその施設の多さに驚ろかされる。

震災直後、原発事故の影響で子供たちが屋外での活動を制限された時期に福島県内では市町村や民間団体が既存の公共施設や商業施設の中、学校の旧体育館などに子供の遊び場を整備した。

公務員で一時期私立の幼稚園の園長だった父から震災後に県内で一番早く整備された郡山市ヨークベニマルを見学に行った話を聞いた事がある。その後も都内では有料になるような充実した設備の子供の遊び場が新たに作られた。

今回は僕が訪れた市町村と子供が無料で遊べる施設の紹介を交えながら犬の看板探訪を記していく。

 

<特別編・その3>へ続く