いぬの看板

あの町角を曲がれば

いぬの看板<特別編・その4>

<特別編・その4>

(N暗K太・著/『ある探訪記のための習作』より)

 

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探訪記2

 

【探訪日】2019年4月30日

【市町村】福島県桑折町

【施設名】屋内温水プール・多目的スタジオ・イコーゼ!

 

桑折町は、伊達市より北西側に位置する。桑を折る町と書いて「こおりまち」と読む。桑折町と言えば天皇への献上品として県内外で広く知られている桃が特産品である。

伊達市から国道4号線を北上するといきなり江戸時代へタイムスリップした気分にさせられた。天守閣へと続く門かと見紛うほど堂々とした風格を放つ地下歩道入口の前でフリソ系の看板を発見したが国道の十字路なので交通量もあり駐車し辛い。場所は把握した。帰りに写真に収めれば良いと判断、イコーゼ!を目指す、たのもー。

イコーゼ!は玉入れや数字が書かれたマスにボールを蹴り込む遊具、バスケットゴールやドッヂボールなど、ボール遊びの種類が豊富だ。プールが併設され周囲には公園やテニスコートもあり老若男女が汗を流す姿がある。

ここで次男が昼寝を始め僕は心の中でガッツポーズ。長男は一人で遊んでいられるので父母に預けるのも気が楽だ。周辺を散策する。公園の歩道に等間隔で並べられた犬看板を発見パシャり。(写真4)

車に乗り込み十字路へ戻る。七色の虹をバックに樽腹の犬自身が看板に前足を掛け警告するイラストだ。(写真5)

雨が上がり雲の切れ間から太陽が差し込む。吾妻連峰の前には本物の虹がうっすらとかかり次第に虹の色が濃くなる。目を看板に戻すと二つの虹が交錯し一瞬どちらが本物かわからなくなった。

無意識にお腹周りをさすっている自分に気づき今晩はビールを控えようかと深刻に悩む。効率良く回収出来たら範囲を広げる予定だったので再び車に乗り込みさらに北へ、国見町を目指す。

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(写真4)

 

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(写真5)

 

<特別編・その5>へ続く

 

いぬの看板<特別編・その3>

<特別編・その3>

(N暗K太・著/『ある探訪記のための習作』より)

 

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探訪記1

 

【探訪日】 2019年4月30日

【市町村】 福島県伊達市

【施設名】 ファミリーパーク伊達

 

伊達市は、東に霊山、西に吾妻連峰、北に宮城県境の山々に囲まれた福島盆地にある。高校野球の強豪、聖光学院は全国区だ。

福島市にある実家からは、南は東京〜北は青森まで続く国道4号線を北上する。施設へ向かう道中全く犬看板が見当たらない。

FP伊達は、屋内に3階建てのお城、滑り台、クッション性の大型積木ブロック、クライミング、ボールプール、三輪車サーキットや屋内砂場、さらにママカフェと呼ばれる交流スペースは十分な広さが確保されている。スタッフの数も揃っている。都内でこの規模の施設を利用すると有料だろう。

子供たちが施設の雰囲気に慣れた頃に父母に散歩してくると告げ外に出た。Googleマップで位置を確認し、住宅街や公園、学校などの公共施設を通るルートを探る。それらの近くは回収率が高い。人が居ない場所には警告や注意は不必要だろう。

FP伊達から円を描くように移動すると決めた。しばらく歩くと古屋の多い住宅街に入りゴミ集積所の囲いフェンスに括り付けられた伊達市の犬看板を発見した。健康的なうんちをしたあと爽やかに振り向く犬のイラスト。(写真1)王道の可愛さだ。紙に印刷後ラミネートが施されている。これはオリジナルかフリソ系か。(※2)

その後、伊達小学校、JR伊達駅を通りFP伊達に戻った。道中フリソ系の看板を何枚か回収した。(写真2、3)昨晩から降り続いていた雨は弱まり霧状に変わった。

 

※2 フリソ系の意味はフリー素材で作成された看板の事で、オリジナル系は文字通り原板(太田氏による呼称)

 

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(写真1)

 

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(写真2) 

 

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(写真3)

 

<特別編・その4>へ続く

いぬの看板<特別編・その2>

<特別編・その2>

(N暗K太・著/『ある探訪記のための習作』より)

 

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まえがき

 

今年(2019年)のゴールデンウィークは、天皇の退位と即位により10日間の超大型連休になった。

長男の幼稚園入園で出費がかさんでいたためGWは生活の足しになればと日雇いの仕事をする予定だった。友人からタイル張りの仕事を貰っていたがGW直前に工事スケジュールが変更、人手が充足したと断りの連絡を受けた。

不意に中島みゆきの「ホームにて」を思い出した。「ふるさとへ向かう最終列車に乗れる人は急ぎなさい」この歌は結局電車に乗らなかった人の歌だが、僕はこんな時は実家に帰るべきだと清々しく思った。

子供たちに普段と違う刺激を与えたい、父母に孫の顔を見せられる、長男が入園してから明らかに子育てのギアを一つ上げ頑張っていた妻の休養、そして僕自身は実家周辺の犬の看板を写真に収める楽しみがある。

いくつかの思惑が瞬時に頭に浮かびGWを実家の福島で過ごすイメージが色づいた。今回の帰省は思惑の一つである妻の休養の為に僕一人で長男と次男を連れて帰った。

 

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犬の看板と福島

 

犬の看板とは、犬のフンの後始末を注意する看板のことだ。(以降、犬看板と呼ぶ)

僕が福島県の犬看板を収集する理由は、先輩で友人でもある太田氏から福島県内の市町村の犬看板とフレコンバックを交互に組み合わせた写真の構想を聞いたからだ。

同氏とは震災以後から福島県内を巡る旅を続けている。2016812日に南相馬市復興支援ツアーで市内のある神社を訪れた際に同氏が犬のイラストに南相馬市と書かれた看板に反応した。「汚染土は持ち出せないのに、犬のフンは持ち帰る皮肉」と同氏はその場で口にした。

後日、日帰り温泉施設の早朝風呂でその構想を聞いた時、アイデアの面白さと分かりやすさから瞬時に僕は唸った。アイデアの終着地は未だ不明だが何か面白い事が待っているかも知れないと感じ協力する気持ちでいる。

福島以外でも旅先で犬看板を見つけると太田氏へ写真を送っている。そもそも犬看板のイラストには目を奪われる引力がある。僕自身は猫派だが犬のイラストを見るのは好きだ。どの犬のイラストもついつい語ってしまう愛おしさがあるし、大袈裟に言って一枚もハズレがない。

太田氏が開設した犬看板だけを定期的にアップしているブログ(※1)があるので様々な犬たちの表情や佇まいを覗いて欲しい。 

1 いぬの看板ブログ http://jet-shirei.hatenadiary.jp

 

子供への刺激、父母と孫の触れ合い。この二点の思惑を叶え犬看板を回収できる妙案は、県内の子供の遊び場を軸に周辺の犬看板を回収することだと考えた。

移動時間に配慮する。4歳と2歳の子供と父母の負担を考え、車で1時間以内の場所をネット検索、なるべく出費がかからない公園や公共施設を探す。

探し出すと多くの施設がヒットした。福島県のホームページには無料で遊べる県内の屋内施設一覧なるページがありその施設の多さに驚ろかされる。

震災直後、原発事故の影響で子供たちが屋外での活動を制限された時期に福島県内では市町村や民間団体が既存の公共施設や商業施設の中、学校の旧体育館などに子供の遊び場を整備した。

公務員で一時期私立の幼稚園の園長だった父から震災後に県内で一番早く整備された郡山市ヨークベニマルを見学に行った話を聞いた事がある。その後も都内では有料になるような充実した設備の子供の遊び場が新たに作られた。

今回は僕が訪れた市町村と子供が無料で遊べる施設の紹介を交えながら犬の看板探訪を記していく。

 

<特別編・その3>へ続く

いぬの看板<特別編・その1>

<特別編・その1/プロローグ>

 

某日、私のところに郵便物が届いた。中には一冊の小冊子だけが入っていて、その表紙にはこうあった。

 

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不可解に思いながらも表紙をめくった。

 

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瞬時に理解した。これは、私が『生活考察』Vol.06に寄稿したエッセイ【「犬の看板」探訪記<茨城犬篇>】を叩き台にして作られた独自の報告書であると。

奥付には「N暗K太」(※個人情報保護のため一部イニシャルに変更)と署名があり、はたして参考文献に私のエッセイのタイトルが記されている。

興奮した私は『ある探訪記のための習作』を急ぎ一読した。

驚愕した。

この「N暗K太」氏は、私が提案した犬の看板探しという行為をただなぞっているだけではなく、その根底にある「犬の看板探しスピリット」としか呼べないような志をしっかりと持って探訪を実践しているのである。

この報告書は十二分に発表に値すると思った。

そのため、基本的には市区町村名を添えた看板画像だけをあげている当ブログではあるが、それを一度中断し、何回かに渡り「N暗K太」氏の報告を<特別編>と題してアップしていくことにする。

 

<特別編・その2>へ続く