いぬの看板

あの町角を曲がれば

いぬの看板<特別編・その17>

いぬの看板<特別編・その17/エピローグ>

N暗K太・著『犬の看板 報告書 Voyage of my dog sigh <弥彦線越後線編>』の文章はこれですべて公開し終えた。

彼から3度目の郵便物が届くのかどうかは私にもわからないが、その機会が訪れて興味深い報告だと思えれば、ぜひまた公開したい。

 

「犬の看板探し」は旅先でおこなう遊びとして非常におすすめできる。地元の料理を食べたり観光やお土産を買う行為にその遊びを加えることで、旅の面白味がまたひとつ立体的になる。

そしてたくさんの犬の看板に触れることで様々なものが見えてくるから、面白さは常に加速していく。

犬の看板を自分なりの解釈で分類わけしてもいいだろうし、看板の中の犬の気持ちになって想像力を豊かに膨らませるのもいいだろう。

自分から能動的に動けば、そこに犬の看板はたしかに存在していて、出会うことができる。

 

「ああ、日本のどこかに、私を待っている犬がいる」

 

<特別編>はこれにて終了。

次回からはまた市区町村名を添えた犬の看板画像だけをアップしていきます。

 

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いぬの看板<特別編・その16>

<特別編・その16>

(N暗K太・著/犬の看板 報告書 Voyage of my dog sigh <弥彦線越後線編>より)

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6.新潟市

新潟駅万代口を出ると、タクシー乗り場があり、キャリーバックを抱えた人達がタクシーを待っていた。

その先にバスターミナルが見える。路線は10以上あるだろう。バスが横並びで発車する形になっている。戻ってくるバスは、皆バックで発車位置へ停車している。円形ではなく横並びの形は珍しいと思った。

バスターミナルを過ぎ、近場の公園へ来たが犬看板が見つからない。公園の先に住宅街が見えるので進む。電信柱の住所プレートを見ると、南万代町と書いてある。遠くの方に煙突が見え黒煙が昇っている。犬看板がある気配がしない。

持参した魔法瓶が空になった。道中見つけた個人商店は閉まっていた。ここまで順調に犬看板を回収出来ていたことと、これまでの犬看板回収時間と比較しても時間はあったことで気が緩み、公園があり万代シティへ遠回りしないルートを選択してしまったが、もう少しルートを吟味すればよかったなと反省した。

駅前の公園は要注意だったはずだ。特に大きな市の駅前公園では犬看板はあまり見掛けない。これは一つの推測だが、恐らく人の出入りが激しいため、犬の散歩をするには不向きで看板の必要性がないのではないか。また、看板が乱立しないよう景観も気にしているだろう。

犬看板を回収できないまま万代シティについた。途中、NGT48劇場を横目に通り過ぎた。バスの発車時刻まで20分は残されていたがこの周辺に犬看板があるとは思えない。お土産用にゴディバでクッキーを購入し、デパ地下でコーヒーを買い、イートインスペースでiPhoneの充電をした。予定していた新潟港行きのバスは超満員により乗車することが出来ず、タクシー乗り場にも暫くタクシーが来ず焦ったが、僕の他にも待ち人が溢れているためか、急遽臨時のバスが出るとアナウンスがあり、そのバスに乗車することができた。

新潟港の佐渡汽船内は、佐渡行きのフェリーを待つ人でごった返していた。友人も予定していたバスに乗ることが出来ずに一本遅らせてフェリー出港時刻ギリギリで乗船した。

フェリーが動き出す。銅鑼の大きな音が鳴り響く。友人と二人で船の甲板に出た。日差しが甲板に反射し目を開けていられない。風が強く、時折その風の強さで身体がよろける。ほんのり潮の香りがする。もうすぐ佐渡か。

犬の看板のことは忘れていた。妻や子供達の顔が頭に浮かぶ。フェリーを囲うようにウミネコが飛翔している。

 

.探訪を終えて

11月某日、写真新世紀の公開審査会に出向いた。優秀賞受賞者7名が公開プレゼンテーションを行いグランプリを選出するものだ。

優秀賞の一人に、全国に点在する気象観測点の装置の写真をまとめた方がいた。彼はプレゼンで装置の写真が映される度にこれは何処どこの場所で撮影したもので、ここに辿り着くまで大変だったとか、この装置実は学校内にあったんですとか、とてもハッキリと話されていた。

素晴らしいと思った。自分が歩いた場所の風景や匂いなどを覚えているのが話ぶりでわかったからだ。元メジャーリーガー松井ヒデも現役時代に自身が放ったホームランの対戦ピッチャーや球種を覚えている云々というテレビ番組を見たことがある。

話を犬看板に戻す。犬の看板集めという目的のため一心不乱に町角を曲がる。背中に浴びた太陽の熱さや、国道を歩いた時の車の排気ガスの匂い、腰まである雑草をかき分けて犬看板を撮影したこと、犬看板の裏にトカゲが張り付いていたこと、通り過ぎた家の縁側に座っていたおばあさんの靴がReebokイカすなと思ったこと、長くコンクリートを歩いた後で砂利を踏むと足が軽くなったように感じたこと、改めて犬看板を眺めながらそういった感覚や出来事を僕も鮮明に思い出すことができる。

 

佐渡両津港に着いた僕と友人は、発車するバスを待つまでの間、コーヒーハウス再会という喫茶店で過ごした。会計が一緒になった地元の人にこの辺で美味しいご飯屋さんがないか尋ねると、ないと即答された。無言で店を出る。お店から離れたなと感じたところで、友人とお互い目を丸くしたまま向き合い、吹き出し笑い合った。

 

一週間ぶりに見た子供たちは、真っ黒に日焼けし逞しく感じた。妻も妻の両親も元気そうだった。

滞在中に友人とは、海で泳ぎ、夜は花火を見に行き、郷土資料館でのろま人形を見たり、うさぎ観音を見たり、観光名所を巡った。いくつか立ち寄ったご飯屋さんはどれも美味しかった。佐渡は魚介のイメージだが、キュウリ、ナス、トマトなどの夏野菜は一口で採れたて感が分かり最高に美味しかった。

友人が帰京した後は、家族とゆっくり過ごした。そんなナチュラルな状態で過ごしながらたまたま見掛けた犬看板たちを紹介して終わりにしたい。

 

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佐渡市

 

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小木町

 

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相川町

 

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おまけ(弥彦村 カントリーサイン

 

<特別編・その17>へ続く 

いぬの看板<特別編・その15>

<特別編・その15>

(N暗K太・著/犬の看板 報告書 Voyage of my dog sigh <弥彦線越後線編>より)

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5.弥彦村

川の向こうが弥彦村だ。朱色の橋を渡る。

橋の入口には、鳥居のロゴの下に弥彦村と書かれたカントリーサインがある。看板は色褪せ全体にヒビが入り、水分を全て抜き取られたような干からび感がある。日差しのせいか看板が反射し歩行者目線では絵や文字を判別するのはほぼ不可能だ。

手を高く伸ばしながら角度を変え写真に収めて眺めることでようやく確認出来るが、それでも目を凝らさなければならない。まるで凝視すると文字が浮かび上がるステレオグラムのようだ。

橋を渡ると直進か左か右か、選択を迫られる。遠目で看板らしきものが確認できる右へ歩を進める。看板はポイ捨て禁止を警告するものだった。さらに視線を奥に向けると建物もなく緑道を進むようなので引き返し逆方向に直進する。整備された水路を見下ろす形で歩道が続き両脇には民家が多くある。目線の奥に衝立が見えたのでダッシュ

弥彦村の犬看板だ。一歩毎にポイズンを食らっている。魅惑的だ。バシュバシュ、しばし16ビットの世界に空間移動していた。すぐさま吉田駅へ引き返す。

引き返す途中で見逃していた新潟県狂犬病予防推進協議会の犬看板を発見した。縦に入った柵が絶妙に作用し犬が二匹居るようにも見え、これも騙し絵の類いではないのかと錯覚した。

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弥彦村

 

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新潟県狂犬病予防推進協議会

 

新潟行きの電車には無事乗車した。あとは新潟で友人と合流して佐渡へ行くだけだ。旅の終わりを意識する。

新潟駅では、Negiccoのグッズショップ「EAST MOAT STREET BLUESイーストモートストリートブルース)」に寄ろうと考えていたが、バスへの乗り継ぎが上手く行きそうにない。お土産を買う時間も作らねばならないので無理は出来ないと思い、次回の楽しみに取っておくことにする。

駅前を散策しながらゆるりと万代シティバスセンターへ向かおう。目を閉じながらそう思案しているといつの間にか寝てしまっていた。車内の騒がしさで目を開けると、周囲は学生さん達で固められていた。

新潟大学前駅へ停車したようだ。車内は冷房が効いている。新潟駅に着く頃には汗は完全に引いて服も乾いていた。

 

<特別編・その16>へ続く

 

 

いぬの看板<特別編・その14>

<特別編・その14>

(N暗K太・著/犬の看板 報告書 Voyage of my dog sigh <弥彦線越後線編>より)

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4.燕市

燕三条駅から二両編成の弥彦線に乗り吉田駅を目指す。電車の待ち人は20人程居たと思うが、僕が乗り込んだ車両には誰一人居らず貸切状態だった。単線だったので吉田駅とは反対方向の東三条駅方面へ向かう人たちだったのだろう。

背負っていたリュックサックを下ろすと気分も軽くなった。電車が動き出す。車窓から強烈な日が差し込むが次第に慣れると、偶然手に入れたプライベート空間に旅の高揚と相まって超絶な心地良さを感じた。天井に取り付けられた扇風機の羽の音が聞こえる。

燕市街を過ぎると田園風景が広がる。田園の中を窓を全開に開けた軽トラックが走っている。吉田駅に着けば、新潟行きの電車が来るのは約40分後だ。燕市の犬看板もゲットしたいが市より村の方がグッとくるよなぁと思う。

吉田駅から弥彦村までは徒歩10分程。弥彦村まで行って戻ってくるだけで限られた時間の半分を要す。それは予めわかっていたので、少しでも時短するために吉田駅に向かう車内から犬看板を探していた。それらしい看板を二枚ほど見つけたが電車が左にカーブして行き、弥彦村とは逆方向だということが駅に近づくにつれ判明する。車内で念入りに探索ルートを確認していたが線路の進行方向までは注意していなかった。改札を早足で駆け抜ける。全身のセンサーを開放する。民家を縫うように進む。期待を胸に町角を曲がる。犬看板が無いことを確認し、一瞬だが悲しい気持ちになりまた次の町角へと向かう。その繰り返しだ。

iPhoneで時間を確認すると10分程経っていた。背負っているリュックサックが密着している部分に汗がベッタリ張り付いているのが分かる。電車の時間が迫っていることを意識し気持ちが焦る。Googleマップ上で緑に表示される場所が空き地だったり、樹木が密集しているだけだったりすることがあるが今回は当たりだった。

公園だ。園内で電柱に括り付けられた犬看板を見つけた。燕市のワンチャンだ。ヨシャ!思わず声が出た。写真を見返すと看板がやや左寄りで、本当に焦っていたなと思うがその瞬間は必死だった。

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燕市

 

まだ他に犬看板はないか一度公園の外に出て確認していると、園内を囲う柵に吉田町と書かれた犬看板を見つけた。ここは燕市のはずだが…探訪記を書く際にこの辺りについて調べると、過去に幾つかの町が合併をしていたことが分かった。

現在の地図には載ってなくレア度が高い、いつ無くなってもおかしくない看板達だ。市長選で、ワンちゃんと共存するクリーンで健全な街づくりを標榜した立候補が当選し、手始めに市内の犬看板の張り替えを一斉に命ずるかも知れない。

 

f:id:jet-shirei:20191222233211j:plain吉田町

 

園内の水飲み水栓の蛇口を捻り、顔を濡らし、水を口に含む。タオルを取り出し顔を拭う。顔を上げ目を細めた。日差しが強くなってきている。ギラギラと音がするかのようだ。

 

<特別編・その15>へ続く

いぬの看板<特別編・その13>

<特別編・その13>

(N暗K太・著/犬の看板 報告書 Voyage of my dog sigh <弥彦線越後線編>より)

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3.出発の朝、いざ探訪、三条市

時刻 午前530分頃

 飼い猫に十分なご飯と飲み水を置き、姉に猫の面倒を宜しくお願いしますとLINEした。魔法瓶に麦茶を満タンに注ぎ家を出る。既に日の出は迎え早朝とは思えない明るさだ。駅へ向かう自転車の上で少し風の冷たさを感じるが肌寒くはない。信号機の青色が眩しい。旅立ちの朝はいつだって世界がクッキリと映る。遠くでラジオ体操第一の曲が聞こえる。123456、深呼吸…。

 新潟行きの新幹線内は混雑していた。席車両から溢れた人達がデッキに流れている。僕もデッキの人混みに埋もれた。結局、燕三条駅に着くまで席に座ることは出来なかった。

 燕三条駅は、金属加工の町だ。新幹線の改札内には、特大のナイフとフォークが×印の形で飾ってある。改札を出ると、今度は大きなショーケースがあり、その中には地元企業の金物製品が並んでいた。同じ金物でも微妙に形状や色合い、輝きが違う。企業数の多さに驚かされた。

吉田駅行きの弥彦線の電車は約1時間後。まずは腹ごしらえだ。朝食だ。

犬看板だけをアクティブに巡りながら食すご飯を犬看板めしと名付ける。この旅、いや犬看板めし史上初(たぶん)は、駅構内の駅そばだ。もり蕎麦(並)の冷やしを注文した。底浅の透明なガラス皿、そば量以上に盛られたネギと海苔。もっさりした麺は口の中に入れるとご飯を食べているかのようだ。海苔がいつまでも口の中に残る。お皿にも張り付く。一人で店を切り盛りしているおばさんは黙々とキッチン周りを掃除している。ウォーターサーバーからちょろちょろ出てくる水はとても冷えていた。口の中の海苔を洗うようにコップの水を一気に飲み干した。記念すべき犬看板めしを撮り損ねてしまったことをお詫びしたい。

 朝食を済ませた後は三条市の犬看板を探す。新幹線内で下調べしていた駅より徒歩10分程の公園へ向かう。もしこの公園で回収出来なかったら、公園の先を流れる信濃川の河川敷を狙う予定だ。国道沿いを歩く。とても長く遠く感じる。iPhoneの時計を見るとそれほど時間は経っていない。僕の経験上、国道沿いに犬看板があることは多々あるが、見晴らしが良いため遠くまで確認できてしまい、看板らしきものが見えないと進む気にならない。今回は公園へ向かう為に進むしかない。信号待ちも長く感じる。信号機の3つ団子が縦向きだ。信号が青になる。全く眩しくない。

歩道を歩く僕の横を大きなダンプトラックが通り過ぎた。キャップを深く被り直し少し気合いを入れた。国道から中に一本入る。フィールド上の中田ヒデのように首をキョロキョロさせ、スペースではなく犬看板を見つける。とにかく四角いものだ。移動中に犬看板を見つけることはできなかったが、目標だった公園内にて無事三条市の犬看板を発見した。

スクール調だ。オトナ犬の笑顔は穏やかで温かみのある一枚絵だ。園内の一角が小高い丘になっている。丘を勢い良く駆け上った。気持ちは次の目的地へと向かっていた。

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三条市

 

<特別編・その14>へ続く

 

いぬの看板<特別編・その12>

<特別編・その12>

(N暗K太・著/犬の看板 報告書 Voyage of my dog sigh <弥彦線越後線編>より)

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2.旅の準備

今回の旅の一週間程前に、妻は子供達を連れ佐渡へ先乗りしていた。家族総出で犬看板巡りは酔狂だろう。

今回の探訪など、なるべく家族に負担を掛けぬよう自分なりに配慮しているつもりだ。好き勝手やればいいじゃんと妻は言ってくれるので大変有難いが、家族に負担を掛けたくないという気持ちは本当だし、自分のやりたい事をしたいという気持ちにも嘘はない。

こんな時は決まって、長嶋有氏の「いろんな気持ちが本当の気持ち」という言葉を思い出す。日々制約が付き纏い、大きな事から小さな事まで決断の連続だ。家族のこと、仕事のこと、自分のこと、全体のバランスを崩さないよう、あんな事やこんな事をして必死に保っているつもりだ。

 

【旅のスケジュール】 自宅出発 自転車 05:30 浦和→大宮 JR京浜東北根岸線 大宮行き 06:08→06:17 大宮→燕三条 上越新幹線 とき301号 新潟行き 06:34→07:59 燕三条→吉田 JR弥彦線 吉田行き 09:02→09:15 吉田→新潟 JR越後線 新潟行き 09:56→10:55新潟→万代シティ 徒歩 15分程度 万代シティ→新潟港 新潟交通 バス 11:57→12:05 新潟港→両津港 佐渡汽船 12:35→15:05

 

8/10-8/15まで、6日間ある夏休みをフルに使い佐渡で過ごす。

1泊だけだが普段から子供達とも頻繁に遊んでくれている10年来の友人を佐渡に招待していた。妻の祖父母の家がほぼ空き家状態にあり、滞在する間はそこに寝泊りさせて貰う予定だ。友人とは新潟港で合流し佐渡へ向かう段取りをつけた。

今回の旅の計画は、佐渡へ向かう新潟港発のフェリー出港時刻から逆算して考えた。大宮駅から新潟行きの上越新幹線に乗り、燕三条駅で下車、普通列車を乗り継ぎ、新潟駅へ向かう事に決めた。

通過する市町村の犬看板を集める。スケジュールを見て頂ければ分かるが乗り継ぎまでの時間はそう多くはない。次の電車が来るまでの待ち時間が勝負になる。

燕三条駅から新潟駅に向かうルートは2つある。日本海側を通るルートと内陸を通るルートだ。地図で市町村の境界線を確認し、JRの路線と照らし合わせる。

 内陸ルートの場合は、加茂市田上町

日本海ルートの場合は、燕市弥彦村

 を、通過するようだ。

 内陸ルートの加茂市田上町は隣町だが降車する駅が別だ。ここで途中下車を繰り返すとフェリーの出港時刻に間に合わない。どちらか一つの犬看板しか回収できない。

日本海ルートは、乗り換え地点の吉田駅で下車すると、徒歩圏内で燕市弥彦村の犬看板を両撮りできる可能性がありスケジュールも問題ない。新潟行きの電車が来るまで40分程しかなく時間は限られているが、一つでも多く回収出来そうな日本海側ルートを選択した。何より海の方に向かいたいと思った。

 

太田氏がブログにアップしている犬看板の写真が150枚を超え、ちょうど『生活考察』Vol.06にエッセイを寄稿した頃だっと思う、同氏と犬看板について話をしていた時のことだ。

「はじめは自分でも何をしているかわからなかった」

 ちょっと呆れた表情を見せ、どこか懐かしむように笑った。視線をやや下に移した目は純粋だった。

太田氏は、いぬの看板ブログやエッセイの他に、犬看板くじ、写真集、オリジナルの犬看キーホルダーを作成しているが、この秋からフィルムアート社が運営する「かみのたね」というウェブマガジンの中で「犬たちの状態 犬を通して世界を認識するための連作」、を写真家の金川晋吾氏とスタートさせている。

 

<特別編・その13>へ続く

いぬの看板<特別編・その11>

<特別編・その11>

(N暗K太・著/犬の看板 報告書 Voyage of my dog sigh 弥彦線越後線編>より)

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1.はじめに

今年のGWに実家のある福島県へ帰省した際に、県内の犬看板巡りの記録を「ある探訪記のための習作」というタイトルで記し、小冊子にして太田氏へ送りつけた。

小冊子は、太田氏だけに報告することを目的としたもので、大真面目な遊戯であった。タイトルに入れたある探訪記とは、太田氏がリトルマガジン『生活考察』Vol.06に寄稿した「犬の看板」探訪記〈茨城犬篇〉というエッセイを指し、エスキースなので軽めに読んでくださいという思いと本家に対しておこがましい気持ちで、習作と付け加えた。

小冊子を読んだ太田氏から、ブログにアップさせて良いか?という連絡を貰い、同氏が運営する「いぬの看板ブログ」に僕の探訪記がアップされた。この時、また読みたいというメッセージも貰っており、何かのタイミングで二回目を記さなければという意味不明な使命感と次は習作から前進しなければならないと気負いも生まれた。

来たる本番に備えたつもりはこの時は全くなかったが、二回目を書いている現在、そのタイトルを付けた意味があったのかも知れない。二回目の犬の看板探訪記は、どういったものにしようか。近隣の市区町村を巡り記すか、過去に太田氏に同行した記録を再考し記すか、そんな事をぼんやり考えていたが、旅情を催させるものが僕には必要だった。そしてこの夏、妻の実家がある新潟県佐渡市へ遊びに行く事になり大チャンスだと思った。

今回僕が記すのは、およそ半日の短い記録だ。犬看板回収という目的と共に旅の気分も詰め込みながら記していければと思う。何故こんな事を言うのかというと、二回目を書くにあたり僕は初めからブログ掲載を意識せざるを得なくなっていたからだ。もちろん、ブログ掲載は太田氏の判断によるので二回目の探訪記が陽の目を見る機会があるかどうかは分からない。

 

<特別編・その12>へ続く

 

いぬの看板<特別編・その10>

<特別編・その10/プロローグ>

突然にはじまるものは何も恋ばかりではない。

毎日なにげなくのぞく郵便受けにも「突然」がひそんでいる場合がある。

約半年前に<特別編・その9/エピローグ>を終えたときには、まさか<特別編・その10>を書く機会が訪れるとは予想もしていなかった。

 

某月某日、日の出前に家を出た。日銭のために労働にいそしみ、疲れ切った身体を引きずりながら深夜に最寄り駅をおりる。改札を抜け、寒さにふるえながら帰路を急いだ。

緩慢な動作でいつもの郵便受けを開けると、大きめの水色の封筒が入っていた。この手の郵便物が届くことはまれだ。たいていは何かの支払いを催促する無機質で機械的な封書か、新築マンションの完成を知らせる類の投げ込みチラシしかないからだ。

いぶかしみながら開封した。中身を取り出した瞬間に意味を悟った。これは、半年前に届いた「ある探訪記のための習作」(http://jet-shirei.hatenadiary.jp/entry/2019/06/01/104706)に続く創作物であると。

そこには「犬の看板 報告書」と題字が掲げられ、N暗K太(※個人情報保護のため一部伏字)の署名があった。そしてその下にはこう続く。

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以下のとおりご報告申し上げます。

【題字】 Voyage of my dog sigh <弥彦線越後線編>

【記】

  1. はじめに
  2. 旅の準備
  3. 出発の朝、いざ探訪、三条市
  4. 燕市
  5. 弥彦村
  6. 新潟市
  7. 探訪を終えて

以上

 

嗚呼、また誰かによってどこかの「犬の看板」が探され、見つかったのだなと、他人事のように納得した。

報告書を丁寧に一読し、感心した。今回もこれをブログで発表しようと決めた。

 

そのため、市区町村名を添えた「いぬの看板」画像をあげる行為をいったん中断して、何回かにわたってこのN暗K太氏の報告書を<特別編>としてアップしていくことにする。

 

<特別編・その11>へ続く